はじめに
個人的に好きな作品の、好きなシーンを、好きなように語る記事です。大き目のツイートのようなものです。
この記事にはバキの範馬勇次郎 VS 郭海皇戦の軽微なネタバレがあるため、ご注意ください。
本編
男の子が憧れる壁ドンとはどのようなものでしょう?
当然、 範馬 勇次郎 VS 郭 海皇(かく かいおう)戦 ですね。

〝究極の暴力 VS 究極の武〟を謳うこの戦い。
そもそも、武術とは何か?
それは、力を持たざる者が屈強な敵に素手で抗えるよう、人類が生み出した知恵と技術の結晶の一つであると言えます。
であれば、御歳146歳、ほとんど骨と皮しかない郭海皇が、地上最強の〝生物〟と名高い範馬裕次郎と互角に渡り合う構図は、まさに〝究極の暴力〟VS〝究極の武〟というキャッチコピーに相応しいでしょう。
この時点で、既にロマンに溢れる構図です。
その生涯の、ほぼ全てを中国武術に捧げ続けた郭海皇 。
自身こそが最強の生物であると、自他ともに認める唯我独尊の範馬勇次郎が、
「誇っていい。郭海皇は、中国武術そのものだ」
と賛辞を贈って始まるこの戦いは、冒頭から既に、胸に来るものがありました。
連載当初、リアルタイムで本戦を読んでいた私は、郭海皇のような老人がいかにして範馬勇次郎という怪物と戦うのか、興味津々でした。
と言うのも、筋力で戦う事の出来ない老齢のキャラは、合気道のような技量特化のキャラになりがちですが、バキにおいて、既にそのキャラは渋川剛気という合気道の達人で、登場済みだったからです。
郭海皇が使う武術の正体は〝消力(しゃおりー)〟
体重すら消し去る究極の脱力こそ、究極の防御と語る〝守りの消力〟
脱力⇒力み の振れ幅こそが破壊力を生む〝攻めの消力〟
なんと……
いやいやいや…!!
確かにそういう理屈はあります。
宙を舞う羽毛は、ヘビー級ボクサーのパンチでも破壊できません。
空手にしろボクシングにしろ、打撃の直前は極力リラックス(脱力)する事で、打撃時のスピードと破壊力を生むと、確かに習いました。
それを極めた郭海皇は、ホッキョクグマをも屠る範馬勇次郎の剛拳を受け流し、岩の壁にクレーターを作る破壊力の打拳を繰り出しました。
なんという拡大解釈でしょう。
なんという読者に向けたペテンとハッタリでしょう。
一応は現実の理屈をベースにしているとは言え、ほぼファンタジーの域です。
それが、個人的には大好きでした。
そもそも、漫画やフィクションに、厳密なリアリティや理屈を強いるのはナンセンスです。
フィクションの世界に敷く理屈や原理は、作風と作中の世界観にもよりますが、あくまでフレーバー程度でよいと、個人的には思います。
加えて、146年という、寿命にすら屈しない、途方もない年月を武に捧げ続けた郭海皇だからこそ、消力というファンタジーに説得力を添える事が出来たのかもしれません。
その結果、こんなにもか弱い老人が、地上最強の生物と、武を以て正面から殴り合う絵面に、大満足でした。
そのおかげで、〝壁ドン〟という言葉を聞く度に、私はこのシーンを思い浮かべてしまうのです…。
以上、個人的にバキで好きなシーンの独り言でした。
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