ダークソウル3という、140字小説の師匠

「久しぶりに、ゲーム買ってみようかな…」

仕事の帰り、フラっと寄ったお店で手に取ってみたのが、ダークソウル3でした。

どんなゲームかを簡単に言えば、ロード・オブ・ザ・リングやハリー・ポッターの世界観から、ダークな要素だけを抽出したような、アクションタイプの死にゲーです。

エンディングまでに死んだ回数は、143回を超えたあたりで数えるのを止めました。

何の気無しに手に取ったゲームがダークソウル3で良かったと、心の底から思います。

時間を忘れる程に、夢中になりました。

ダークソウル3の何が、なぜ、そこまで面白かったのかを語ると、おそらくスマホの限界表示文字数を超えてしまうので、ここではその内の1点に絞って、語りたいと思います。

即ち、〝フレーバーテキスト〟についてです。

ダークソウルシリーズの特色として、ストーリーらしいストーリーが明示されない点があります。

オープニングで、モノローグこそ入りますが、内容は唐突で、とても抽象的で、要領を得ません。

しかし、荒廃的で退廃的な、尋常ではない世界観と雰囲気は、ビシビシと伝わってきます。

そして、墓地で目が覚めた主人公を操作し、ただただ道を行き、あらゆる敵を退け、ひたすら進みます。

全編を通して、会話やイベントは滅多にありませんし、あったとしても、主人公が何者で敵は誰で何のために何と戦っているのか、親切にいちいち解説してくれる人は一人もいません。

大抵は皆、意味深なセリフをポツリポツリと語る程度です。

私の中でRPGにおけるストーリーの…いえ、RPGに限らず、あらゆる小説や漫画やアニメや映画におけるストーリーの前提が、大きく崩れた瞬間でした。

「こんなにも不親切なストーリーテリングの形があるのか」

と、驚愕しました。

そして、それが最高でした。

何が最高かと言うと、読み手に懇切丁寧に1から10まで説明してあげる事を一切省く代わりに、世界観も物語もほぼ全て〝フレーバーテキスト〟によって賄っている点です。

フレーバーテキストとは、その名の通り、このゲーム世界に〝フレーバー(香り)〟を漂わせるテキストです。

これは、道中で手に入る武器や防具も含むアイテムの類の、ほぼ全てに付属しています。

つまり、アイテムを集めれば集める程、そして想像力を働かせる程、このゲームの世界観や物語の香りが強く漂ってきます。

どれもこれも、プレイヤーの想像を掻き立て、刺激してきます。

それが、最高に気持ちがいいのです。

具体例として、個人的に特に好きなテキストを紹介したいと思います。

ボスの一人に、大鉈を振う〝ヨーム〟と言う巨人がいました。

このゲームは、ボスを倒すと、そのボスが使っていた武具を手に入れる事が出来ます。

大鉈のボスを倒した時、入手リストの中に、大盾がありました。

「盾なんて使ってなかったのに、どうしてだろう?」

と、そのフレーバーテキストを開くと、こうありました。

武具の性能説明の合間に、そっと添えられている文章が、フレーバーテキストです。

この巨人の王〝ヨーム〟は、廃墟と化した都で独り、玉座に腰かけていました。

ダークソウルのボス戦は大抵、相手がどんな奴かを把握する間もなく、出会いがしらに唐突に死闘を繰り広げ、そして決着します。

今の相手は一体なんだったのか?

会話もイベントも無いため、その詳細は一切語られず、テキストが醸し出すフレーバーから味わうしかありません。

とりわけ、巨人ヨームのそれは、哀愁とその壮絶な人生を想起させる、印象深いものでした。

せっかくなので、もう一つ紹介したいと思います。以下のフレーバーテキストです。

「自衛の刃であり、自刃の術」
と、頭韻を踏みつつ、自衛と自刃という対義的、あるいは同義的な言葉選びにセンスを感じます。


「ただの一度しか振るわなかった」
と締めている所も、また最高に良いですね。

しかも「母から娘に」とあります。

最初で最後の刃とは、自衛のためであったのか、それとも…

と、否応なく想像を掻き立てられます。

このように、本筋と関係があるものから無いものまで、至るところにフレーバーテキストが散りばめられているのがダークソウルというゲームです。

こんなにも短い文字数で、こんなにもワクワクするものなのか…と、感嘆しました。

当時は、140字小説という文化すら知りませんでしたが、この出会いがあったからこそ文字が持つ魅力と可能性を改めて知り、140字小説を書き始める大きな遠因の一つになったのは、間違いありません。

ジャンルやテイストこそ全然違いますが、私が140字小説を書く時、よくこのフレーバーテキストを師として思い浮かべ、「あれくらい、余韻や想像を掻き立てる文章を」と、目標に掲げています。

それはそれとして、落ちたら100%死ぬ崖っぷちに「この先、宝があるぞ」ってメッセージを残した人は許しません。信じて飛び降りた私が馬鹿でした。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. しゅん より:

    方丈さん、執筆お疲れ様でした。

    これは面白い。

    「フレーバーテキスト」という単語もさることながら、そこに視点が傾く方丈さんがスゴイです💦

    たしかによく思い出したらそんな文章載ってたなぁー…?くらいにしか思ってませんでしたが、ちょっと興味深く感じました。

    フレーバーテキスト。
    意識してみます。今日もありがとうございました。

    • 方丈 海方丈 海 より:

      プレイされていたのですね!
      私も初回時は、軽く読み流していましたが、読めば読むほどフレーバーテキストにハマってしまいました✨
      いえいえ!恐縮です!
      こちらこそ、今日もありがとうございました☺

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