『人の心は映らない』

 あぁ、これこそ至福の時。
 今日も僕は、缶チューハイを傾けポテトチップスを箸でつまみながら、PCのディスプレイを眺める。そこには、自分の部屋でくつろぐ無防備な彼女の姿がリアルタイムで映っていた。
 彼女と言っても、勿論、恋人ではない。数少ない僕の女友達だ。ディスプレイの中の彼女は、今にも下着が見えそうな短パンに、タンクトップというラフな格好で、床のクッションに腰を下ろし、ベッドに背を預けてスマホを弄っている。サラサラな髪質のボブカットはうなじの少し上あたりで切りそろえられていて、画面越しでもそのキューティクルが伝わってくる。自分が覗き見されているとは梅雨知らず、鼻歌を歌っているのがとても愛らしい。背徳感のスパイスが、僕により一層の興奮をもたらしてくれている。たまらない。勇気を振り絞って、講義終わりに声をかけた甲斐があったというものだ。
 
 「あ、ね、ねぇ…真美さん」
 「ん? あ…えっと…田辺君、だっけ。どうしたの?」
 「ノートPCを探してるって聞いたんだけど…よ、よかったら、僕のお古でよければあげようか? 処分しようかと思ってたんだ。10万くらいしたやつだから、スペックはかなり良いよ」
 「え、本当に!? いいの!?」
 
 普段から可愛いなと思っていたけれど、笑顔はもっと可愛かった。そのノートPCによって自分が覗かれる事になるなんて想像もしていないあの無垢な笑顔は、最高だった。あぁ、可哀想に。彼女との会話を思い出す度に、顔がニヤける。
 
 「ところで、真美さんってPCはいつも電源消すタイプ?」
 「うん、消してるよ」
 「あぁ、それは良くないね。PCは電源の起動時に一番電力を食うし、各種パーツへの負荷も大きいんだ。だから、よっぽどの期間使わないとかじゃない限り、PCはスリープモードで開いたままにした方がいいよ」
 「え、そうなの? 知らなかった…。わかった! じゃあ、今度からそうするね」
 
 諸説あるが、僕の言った事はあながち間違いではない。だから万が一、ネットで僕の主張を調べられたとしても、僕が怪しまれることは無い。当然ながら、電源を切られたらPCは何も出来なくなってしまう。ただし、スリープモードなら話は別だ。停止しているように見せかけて、ノートPC内蔵のカメラをバックグランドで常に動かしておき、ネットを介して僕のPCへライブ映像として中継する。生憎、僕はそれを可能にするハッカーのようなプログラミングスキルなんて持ち合わせていないけれど、同じことが出来るアプリケーションやツールが、探せば世の中には転がっているのだ。
 全く、便利な世の中になったものだ。こんなアプリ、犯罪以外のどんな用途で使えって言うんだろうな。実際、内部カメラを秘密裏に起動させての盗撮事件は、過去にいくつもある。僕がしたことは、そういったアプリをノートPCに仕込み、彼女に手渡しただけだ。たったそれだけで、こんな素晴らしいショーを毎晩拝むことができるなら、ノートPCの進呈くらい安いもんだ。
 スマホ弄りで固まった体を、彼女は猫のように伸びてほぐす。美しく長い素足をピンと伸ばし、惜しげもなくディスプレイ越しの僕に見せつけてくれる。胸を張ることでより一層際立つその豊満なバストは、Dカップはあるに違いない。薄いタンクトップ越しに伝わってくる胸の柔らかさは、間違いなくノーブラだ。

短編小説
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