没140字小説
「俺、先月結婚してさ」
そう語る先輩の顔は、幸せそうだった。
「奥さんの写真見る?」
「見たいです!」
先輩は嬉しそうにスマホを渡してきた。奥さんはとても美人だった。だが『綺麗ですね』と常套句を返す事に抵抗を感じた俺は、何を血迷ったのか「独特なお顔ですね!」と言ってスマホを返した。
タイトル:【語彙力】
没理由の解説
オチへの単発頼り感があり、ボツにしました。
オチのインパクトに頼るのであれば、それ相応に衝撃的である必要がありますが、そういう訳でもありません。
オチが弱い場合、それを強く突き刺すための工夫が前半に必要です。
工夫とは、例えば、全く違うところに読み手の思考や印象を向け、そこから急にオチにもっていく、という落差(緩急)などです。
更に言うと、「奥さんの写真を見せる」というこの行為自体への反感も危惧しました。
夫でも妻でも、彼氏でも彼女でも、子供でも孫でも、「写真見せて!」という流れは至極自然であり、未だ普通に見られる光景かと思いますが、消えつつある潮流にある(既に消えてる?)のではと、個人的に思っています。
相手が不特定多数ではないとは言え、顔は個人情報ですし、自分の知らない所で自分の顔を勝手に披露されているのって、あまり良い気分がしない人もいらっしゃるのではないでしょうか?
よって、「このシーンそのものが不快である」という反感を恐れ、冒頭の140字を没にしましたし、この記事のアイキャッチ画像も伏字にした次第です。
十中八九、考えすぎかもしれませんが…。
ちなみに、上記の140字小説は、ほぼ実話です。
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